歩み寄る心 続き

 一人の人物の話から書きたいと思います。「努力する人々」でご紹介した「話をする可能性がある席には真面目な話とくだけた話の二つを用意している」とおっしゃった方です。

これがもっともインパクトがあったのですが、この方の言葉には名言が多いです。

 いわゆる人生論的な本を読むと出くわす言葉も多いのですが、普段を知っているだけに重みがあるというんでしょうか。

 

 ここでどういう方かがイメージできるようなエピソードをちょっとご紹介しておきます。

 

 その1 飲んだ時にその上司(既婚男性)に「本当にいい男だよ。そう思うだろ」と頷いたらその場でライバル?と思ってしまうくらいに何度も熱心に言われていました。

 

 その2 話のネタにいろいろな写真を持ち歩いているのですが、趣味の格好をしている写真は年齢・経歴・家族構成などを一切知らなければ十歳以上は確実に若く見えます。ちなみに私とほぼ同年代のお子様がいます。

 

 その3 俳優のようだと言う方もいるようです。

 

 最近、飲む機会がありました。その時に「ぶつかっていくことが大切」と何度もおっしゃっていました。

実際にこの方は自分から歩み寄っていく方です。この方の凄いところは誰にでもそうだというところです。

その場では同席されたトップを誉めていたのでゴマすりっぽくなってしまいました。でも、これまでの傾向から考えて、偉い方だからというより、その場にいたうちの部署で一番新しい方からだと思います。新しく入ってきた方の宣伝をして、周囲に馴染ませようとするように見受けられるので。

そういうところからも何となく根から人懐っこいというより、努力の方ではないかと感じます。天然の方は逆にここまで気配りできないような気がするんですけど。

 

 痛かったですねぇ。どうしても過去を振り返ってしまい、新しいものに慣れないので。

 今年度に入って、思いっきり人が入れ替わりました。転勤以来、何かとお世話になっていた方が転勤してしまい、さらに部署のトップが変わりました。

現在の方は人当たりがよくて温厚な方です。ただ、前のトップが個人的に共感を呼ぶ方だったんですよね。(何というか非常に正直な方で)

接するのはせいぜい御茶を入れたり、来客の取次ぎをしたり程度です。逆にその程度しか縁がないから余計に「何となく」が左右します。

 

 現在を大切にしましょう。昔と比べるのはやめましょう。

頭ではわかっているのですが、気を抜くとついつい口にしてしまいます。もちろん前も辛いこともや嫌なこともありました。でも、慣れというものがあるからやっぱり楽なんですよね。馴染むのにかなりの時間を必要とするので。

転勤前のこともそうですね。客観的に見ると今のほうがはるかに環境がいいです。でも、散々ぶつかったり、悩んだり、落ち込んだりして、それなりに馴染んできたような気がしただけに喪失感が強いというんでしょうか。転勤が決まったことでこれまで少しづつ仲良くなってきた方々と距離ができたように感じたので余計に。

 

 そういう態度が余計に溝をつくったとわかっています。いわゆるエリートコースで誇りにしている方が多いですから。それを否定しているようなものですしね。

 でも、言い訳させていただくと、事務屋にとっては違います。私は庶務畑が長いけど、本当は庶務を希望していません。本来は競争意識が高くて、成果を求める人間です。それでもやる気になるのは個人として気に入った方々にはできる限りのことをしたいと思うからです。

だから、部外者扱いされると、別に来たくて来たわけじゃないと本音が出ます。逆恨みだとわかっているのですが、それまで苦労して手に入れた環境を失ってしまったという気持ちがあります。

様々な価値観があるということをわかってほしいと思います。

 

転勤してしまった方はそういう私にさりげなく手を差し伸べてくれた方です。本当は快く思っていなかったかもしれません。よく厭味も言いましたし、いじわるなこともしました。でも、面倒見がやたらいいというか、困っている人間を放っておけない性質のようです。

最初に書いた方と非常に近いと思います。上に書いた方がストレートに誉め言葉を口にするのにたいして、この方は毒舌・冗談・軽口にしないと口にできない方のようですが。

そのため初対面ではすっごい嫌なヤツなんじゃないかと思いました。その辺が「師匠」と呼ばせていただきたい理由なんですが。

 

 この方に限らず、不器用な方が多いような気がします。

 

 このところ気がふさいでいて、かなり投げやりな発言をしました。その翌日、席を外して戻ってきたら、上司がこの転勤してきた方から電話があると言いました。

変だなあと思いました。この方、私を名指しで電話する方じゃないんですよね。しかも上の方に距離を置く方で、上司の席に直接電話するタイプじゃないです。とりあえず出たところ、夏休みを取ったなどの世間話。ますます怪しい。実は仕事だと言って、仕事の話をしたのですが、現在は庶務畑ではありません。庶務畑が長いということで頼られることも多いようですが。しかもその内容を私に教えたのはこの方です。

あくまで仕事の話でかけたと強調していたのでこちらもそういうことにしておきました。でも、多分、上司たちがかけて、元気付けてやってくれとお願いしたんだろうなと思います。

 何か行き詰まると「帰ってきて~」とついつい口にしていましたから。

 苦手なことさせてしまってすみません。でも、元気になりました。ただ、何だか涙腺が緩みっぱなしですけど。

 

 このストレートでない優しさが「らしいなぁ」と思います。その人となりを知らなかったら単なる仕事の電話で終わります。ついでにあくまでカモフラージュする気なら庶務席でかけたほうがいいのですが。(笑)

 

 けっして「いい人」たちではありません。口が悪いし、厭味も言うし、ライバル意識も強いし、いじわるもするし。でも、実は「お人よし」という方が多いような気がします。その優しさは後でもしかしてと思うくらいに微妙なんですが。冒頭に書いた方のようにストレートに優しさを示せる方はほとんどいないかもしれません。

 その不器用さで、絶対に損していると思います。

 

実は希望していたところに落ちて、入りました。だから、本来やりたいことではないですし、何かというと愚痴が出ます。でも、こういう方々がたくさんいるから好きです。自分では平気で悪口を言うけど、人に言われるとむかっとします。

 自分に合う仕事って、多分、仕事の内容だけじゃないんですね。